私の好きな・・・アボガド

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　尾池和夫

　果物屋や八百屋の店先に並んでいる色とりどりの食物は、どれをとっても私の好物であり、組み合わせを楽しみながら季節を味わう。

　好きな果物の第一は、アボガドである。生のままさしみにして、ワサビじょうゆで食べるのが最高である。

　ペルーの首都リマで夕食の食卓に並べられたのを見て、まっ先にひと口味わい、思わず、うまいと声を発したのが、私とアボガドとの初めての出会いであった。リマの人たちはそれをパルタと呼ぶ。

　アボガドはカリブ海沿岸の原産だが、南米でも栽培されている。今、日本に輸入されているのには、メキシコ産のものが多い。

　毎年、私の誕生日には、妻が必ずよく熟したアボガドを探してきてくれる。その日の食卓に欠かせない一品となっている。

　まん中の大きな種を大切に取り出し、水をはった皿に何日か置くと、やがて根が出てくる。それを鉢に植えておくと、忘れたころ芽が出る。去年食べた種からもう五十センチほどに、まっすぐ生長したアボガドの木が、十数枚の大きな葉をつけている。

　以前は、なんでこんなものを、ときらっていた子どもたちも、今年はついにおいしいと言って、私と争うようになった。わが家の子どもたちも、すっかりおとなの舌を持つように成長したのだと、つくづく感じる夕食であった。