バー
075-541-5767
京都市東山区切通し末吉町下る東側 祇園切通しビル１Ｆ
営業時間 18:00-01:30
日曜日、祝日 定休
１９９７年７月１５日で回転（開店）８年目になる。
清水の産寧坂北入るに「天界（075-531-2067）」
という店があり、
そこからオーナーの手作りのお惣菜が運ばれて、カウンターに並んでいる。春菜夏豆秋茸冬肴。
スコッチ、カクテル。バーテンダーの辻泰好氏が気分にあったカクテルを作ってくれる。
-------------------------------------------------------------------------
コペルニクス的転回
尾池和夫
ポーランドの学者であったコペルニクスは、「天体の回転について」という本を著し、地球や惑星は太陽を中心としてそのまわりを廻っているという地動説をとなえた。それまでの、宇宙は地球を中心として運動する、という宇宙観を根本からくつがえす考えであった。
この太陽中心宇宙説は、近世の新しい世界観の始まりを告げるものとなった。
ドイツの哲学者カントは、その著書「純粋理性批判」で、科学的認識の成り立つ根拠を論じ、主観が客観を可能にするという考えをとなえた。それをカントはみずから「コペルニクス的転回」と呼んだ。
京都市の花見小路に「コペルニクス的転回」という名のバーがある。夜遊びの上手な友が、その店へわたしを誘ってくれた。
カウンターの向こう側に中国製の大きな金蒔絵の屏風が張りつけてある、十人も入れば満員になるほどの小さな店で、長い一枚板のカウンターの向こうに、美しい女性オーナーとバーテンダーがいて、いい酒が置いてある。
その友は、地動説も天動説もおかまいなく、とにかく宇宙は自分のためにあるという顔で、真夜中の勝手な気分を、けだるい声でバーテンダーに伝える。じっとそれを聞いていて、彼はさっとシェーカーを振る。
目の前に静かにそそがれたカクテルを満足そうに一口飲み、わたしの友は、それからじっと壁の屏風を眺めている。わたしはその横でバーボンを飲み、オーナーとおしゃべりをしながら、頭のなかではひそかにエッセイの仕上げをしている。
